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アジアの眼22
無限に変化可能な楽しい妖怪美術家――柴一茗
1/8/2020 12:33:26 PM  文/洪欣(ホンシン)
 
 


photo by Mao

上海のフランス租界地の復興中路にてアーテイスト柴一茗氏を取材してきた。庭には大きい枇杷の樹が天に向かって聳え立ち、太陽が燦々と当たる窓辺は心地いい雰囲気を漂わせている。植物までもが幸せそうだ。

大きい三部屋にびっしりと積まれている書籍、そこからもわかるように本を大量に読む柴氏。文人の気質ながら、堅苦しくもない、とても魅力的な人柄だ。

気取らない柴氏と話していると、自分の無知さが恥ずかしくなり、もっと本を読み勉強しなきゃ、という気持ちになる。バブリーな中国では珍しいと言いたい。

彼が幼い頃は、中国では子供用の「小人書」 を模写することが常で、それが最初に描いた絵らしい。似ていればうまいと思われる子供時代、決して一番上手い子ではなかったらしいが、最も個性的だったという。

通常、書籍が多いと得てして散乱してしまいがちだが、綺麗に整理整頓されている律儀さと感じの良さ、作品の多元性に驚きながら、どんな描き方も彼独自のものだと思えるから不思議だ。長い冊子に描かれている絵には中国山水画の緻密な静けさに楽しいトリックがいっぱい潜んでいる。思わず口に手を当てウフフと笑いが漏れる。まだタイトルのない描き出しの雑誌、恋心を抱きながらまだ相手には告白できてない少年みたいだ。そわそわ、もじもじ。幼い頃に隠れん坊だった子供達の遊びが画面に移ったような感じだ。緩いけど、可愛い。可愛いだけではなく、ちょいとエロ可愛い。だけど、遠目で見るととても迫力があり、美しく完成度が高い。単調な画面には耐えられないというご本人の性格が如実に画面に現れている。たくさんのものが画面に潜んでいるのに、全体的に画面性が淡麗な感じはアトリエの整理された空間と一致する。


photo by Mao

大学を卒業したら国から職を分配する世代。彼は1965年の黒龍江省ハルピン生まれの北方出身なのに、生粋な上海人の印象の方が強いのだ。理由はないけど、なぜかなんとなく…。

そして、特定の作風を持たないのが彼の作風。気分によって変えられるし、油絵から水墨へ、水彩から粘土へと立体まで、自由自在に遊離できるわけだ。その方が楽しいに決まっている。油絵「遊園驚夢」という作品がある。バルセロナの陽光を思い出させてくれる色彩感に小さなピンクの精霊、小鳥やらがひょっこりと顔を出していたりする。やはり楽しい。東西のものがとても自然に融合している。


遊園驚夢、2019 年 photo by Mao

彼自身の言い方を借りると、最も粗野にも最も精緻にも、最上級の上品さにも最悪の俗悪さにも切り替えがきくという自由自在さ。それは、いろいろと経験した後に生まれた生活の知恵にも思えるが、生まれつきのユーモアにもよる才能だ。

上海商業学校という三年制技術学校を卒業して分配された職場は百貨店で、あまり物資がなかった80年代の百貨店はとても暇で職場にいながらやることがなく、いつも絵を描いていたという。

その時、職場で携わった仕事の中で、ショーウインドーのインストールはとても勉強になったという。外から通る人に見える小さな空間にどの商品をどういう風に飾るかは意外と難しいし、それは直接売り上げにつながる。その飾りで、客は入るかどうかを決めたりするわけだ。

その後、大型レストラン や個室付きの5階建ての建物全体の装飾絵画の仕事があったという。2000年に入ってから流行りだしたカラオケブームでは、台湾系フランチャイズ店「銭箱」が一時凄い勢いを見せていた。カラオケの駐車場には、ラグジュアリーな高級車がずらりと並ぶ光景があった。


月愛し、眠り遅し アトリエ提

今こそ上海の店舗は比較的に小型化してきているが、原画を制限された納期内に1000枚一気に描かないといけない仕事が舞い込んできたりしたという。

それは面白い仕事でもあったし、模写する訓練にはなったが、同時に創造力が抹殺され、ただ描くロボット化するようにもなったため、途中で仕事を断るようになったという。

アトリエはフランス租界地にあり、とても便利な立地。そこに彼の世界が全てそろっていた。好きな書籍が日に日に増え、それが整理整頓され、新たなアイディアが飛び出た時にそれを書き出し、新しい子が生まれてくる。彼の生産の地だ。大量の読書や創作、それには時間の足りなさを感じるため、意識的にアトリエに引きこもり、一人修業を続けているという。

「私は知識人ではないが、知識人を目指して生きている」と述べる柴氏。エドワード・サイド(EDWARD SAID)が著作「東方主義」で述べるように、知識人はいわゆる世間の枠外に放逐された人達で、彼らの枠外での孤独と困窮こそ域内の人達を幸せに導く代価であると。ドイツの哲学者ベンジャミンがその一例である。ナチスによってスペインの僻地辺境まで放逐されたベンジャミンは服毒自殺するが、彼の墓碑には「全ての文明の背後には、野蛮で暴力的な実録が存在する」と書かれている。

そういうベンジャミン、フロイド、ニーチェなど西洋の哲学はとても大きい影響を与えてくれたという。シュール・レアリズム的な作風はそこから来ているのかも知れない。

同時に、中国では「万物に霊あり」の理念や妖怪の世界も彼に強い影響を与えている。水墨画に綿密に。


明月、春風酔す アトリエ提供

毎日を最後の一日のごとく生きると思ったら、最も良いものが出てくる最大の努力をする。30年以上の創作活動の中で、自分は楽観的な悲観主義者だと自己定義する。

人間はとてつもなく複雑な矛盾した総合体、とても変化が多いのは当然なのに、変化のない毎日を過ごす人が多いのは不思議だという。

商業デザインの専攻からプロの現代アートの美術家になった柴氏。様々相反する要素を一身に同居させた妙に楽しい上海の美術家だ。この不思議なアトリエに入ったら皆自然に彼のファンになる。

1 60、70 年代に中国の子供達が読んでいた絵本を指す。
2 リーラースケーターが食事を運ぶ「紅仔鶏」や「小南国」のようなレストランが90 年代のブームになっていた。
2000 年代は大型カラオケ店「銭箱」が流行。そうした大型店舗へのインテリアの一部として原画の需要があった。

洪 欣

東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。ダブルスクールで文化服装学院デザイン課程の修士号取得。その後パリに留学した経験を持つ。デザイナー兼現代美術家、画廊経営者、作家としてマルチに活躍。アジアを世界に発信する文化人。

 
  情報元:人民日报海外版  
 
 
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